戸がバタンと音をたてた。
顔を向けるとそこにはこの部屋の所有者であるイルミが立っていた。

「おかえり」

「うん、来てたの」

彼はそういいながらすたすたと歩き、私のいるソファーまでやってきた。
何だろう、と思っているとドサッと隣に座り、ひとつあくびをして私を見つめた。
真っ黒の目に見つめられた私は、敵に捕らえられた獲物、とまでは言えないが、それに近いものを感じた。
恋人でありながらも、いつもそう思う。

「どうしたの?そんなに見つめられたら穴が開いちゃう」

なんちゃって、と冗談交じりに笑ってみせると彼は首を左に傾けた。

「ん、ってさ、たまに俺のこと敵扱いしてない?」

「えっ」

不意打ちだった、本人にはバレないようにと隠してきたことが隠し切れていない!、不覚だった。
高鳴る鼓動と変な汗が、また私を焦らす。
そんな私を知ってか知らずか、彼はじっと私の目を見ている。
私も彼の目をじっと見つめる。
その間にも、どうしよう、なんて言おう、と思考を張り巡らせる。

少しの沈黙(実際はどうだかわからない)の後、彼は目を閉じながら溜息をついた。
私も、緊張感がほぐれてほっとした、のも束の間。
私は彼に腕を掴まれ、その勢いで彼の胸へとぶつかった。
いきなりのことで、私は額に痛みを感じた。

「あのさ、前から言いたかったんだけど」

「う、ん?」

頭上の声を聞きながら、彼の匂いに酔いしれながら、続きの言葉を待つ。
心なしか、彼の鼓動が速い気がする。

「俺、のことちゃんと愛してるからね」






頭上注意!
(たくさんの愛が降ってくる模様です)


(そんなのわかってる)
(でも)
(その目で見つめられると死んじゃいそうなの!)






2008/5/25
→2008/7/21