「こっから落ちたら死ぬかな」
誰に聞くでもなく、自分に問い質すようにしては言った。
の目には、確かにグラウンドが映っている。
それを意識して見ているのか、とまでは解らないが。
ただ確かなのは、の目には高い場所から見下ろした時に見える、広いグラウンドが映っていた。
「またかよ・・・。死ぬだろ、下コンクリだし」
独り言のように言った質問に、俺は真剣に答えてやった。
冗談を今言えば、は冗談として受け止めないだろうと思ったからだ。
それにもうひとつ、ここは7階校舎の屋上であり、真下を見ればコンクリートで固められている。
砂埃が立っているグラウンドが柔らかそうだという錯覚さえも起こしてしまう。
ここから落ちて死なないはずがないのだ。
「ここから落ちたら顔とかぐちゃぐちゃだよね、絶対」
「たりめぇだろ、ここ7階」
はさっきから病んだような顔をしてグラウンドを見下ろしている。
今までにも何度かあった、この会話。
その度に俺はに同じ答えを出してやった。
ふと、風が吹いた。
風で乱れた髪を耳にかけるは、どこの女よりも女らしく思えた。
「土方くんは」
忽然と話し出したは未だグラウンドを見下ろしている。
「ここ好き?」
「嫌い」
即答で答えると、なんで?という顔で俺に目をやった。
その目は思ったより湿っているようで、光が当たってはキラキラとしていた。
「おまえが隣で泣きそうになってるから」
「…」
「飛び降りたいのか?」
「・・・ここから落ちてく土方くんが見たいな」
5秒の沈黙と一瞬の微笑み
(うそ、じょうだんだよ)
071003/071012