なんとなく、嫌な予感がしてた。
朝、靴下の相方が見つからなかったり、二つに結っていた髪のゴムが切れたり、さっきなんて鏡が割れた。
これはかなりショックだった。
お気に入りだったし、何てったってあいつからの貰い物だったんだ。
だから、割れた時は胸が痛んだ。
そうして割れた鏡を手に、テープで破片が飛ばないようにと貼付けている。
その間にも、鏡の破片が指に刺さって赤い血がぷっくりと姿を現した。
災難だ、と溜息をつきながら思った。
ぎゅっと下唇を噛んで水道まで急いだ。
急がないと、血が垂れる。
「おっと、怪我ですかィ」
総悟がひょっこりと現れて私の怪我をした手を掴んだ。
そしてその手をすっと口元に持ってゆき、ちゅうっと音を立てながら吸われた。
一瞬戸惑ったけど、早くしないと、という気持ちが一気に吹き飛んだ。
今度は私の机を総悟に見られてはいけないと、私は判断した。
見られては困る、総悟があんな無惨な鏡を見たら、きっと悲しむ。
自分のプレゼントした物が壊れているのだから。
「ん?あれはなんですかィ」
ぱっと、総悟が私の机を見た。
多分、鏡だとは気付いていない。総悟が気付く前に、!
「総悟。」
名前を呼ばれて振り向いた総悟にキスをした。
ゴッて音がして前歯が少し痛いけど気にしない。
触れるだけのキスが長かったのか、総悟に下唇を噛まれてしまった。
「ばーかか、ここ教室。」
わかってるそんなの、すぐに返してまた口をくっつけた。
今度は総悟もノリ気なのか、口を開いて舌を出した。
そこまでするつもりはなかったんだけど、なんだか無性に総悟が恋しくなって、その舌にパクッと噛り付いた。
そのあとは、どんどんディープチックなキスになっていくはずなんだけど、やっぱり教室だから、と総悟に言って抱き着いた。
「。」
不意に呼ばれて、バっと顔をあげた。
なんだか悲しそうな顔をしている。
「鏡、また買ってあげましょうかィ」
言った後、ぱっと笑って私を見た。
「…知ってたんだ…」
朝からずっと、嫌な予感がしてた。
でもそれは多分、プロローグ的なモノだったんだと思った。ハッピーエンドまでの、。
(キスの味は...)
20070914