にこっと笑った顔が俺の目に映る。
俺も自然に口元を緩めた。
「銀時、これ外してくれないなら舌噛み切って死ぬ」
薄暗い部屋の中、鎖に繋がれた女が言った。
その表情から、どうやってこんな言葉を出すのだろう。
死なせねえよ、俺は言いながら彼女に近づき口と口をくっつけた。
舌が自然に入っていったのは、彼女が何の抵抗もしなかったからか。
薄っすらと目を開くと、彼女は目を閉じて何かに集中していた。
絡み合う、というよりは一方的に舐めているだけの俺の舌。
いきなり、体に痛みが走った。
くっついている口の隙間から、どろっと流れ落ちる。
と俺の唾だろう、口を離して手で拭うと血が出ていた。
下に目を落すと、床にも唾と血の混ざったような液体がある。
こいつ本当に舌噛みやがった、目を細めながらの顔を見ると、その顔は笑った。
「死ぬのは銀時、あなたなの」
の口元についている血は、俺のもの?
ああ、だから口元が痛いのか。
ああ、今あいつが吐き捨てたやつって俺の舌?
両手で口を覆っても止め処なく流れる液体。
もう諦めて手を退けると口に溜まった液体が一斉に落ちていった。
意識が遠退く中、が俺に言った。
「銀時、愛してたよ」
(鎖に繋がれたまま俺を殺して、どうすんだ)
言おうとしたけど体も口も動きそうになかった。
はっきりとは見えないの顔を見ながら、笑おうとした。
お前も死ぬんだよ、と言う代わりに笑おうとした。
「けど、足りないの」
「・・・あ・・あ、」
言葉さえも忘れてしまった。
(愛してるよ。)
2007.08.22
ヤ行ユ「許してね」
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