オブラートに包んで言うなら、あたしは影からいつもあいつを見ている恋する乙女。
剥き出しのままならストーカー?と、先生にはよく言われる。
響きが悪いけど、今のあたしにはそんなの関係ない。
「土方先輩!これ使ってください!」
下級生らしき女の子達が汗に濡れたあいつの傍に擦り寄っていく。
私のを使って!と、目を輝かせて言う女の子達は周りから見ればかなり痛い。
自分も同じようなものだと思っていても、慣れない。
あたし自身、この資料室の窓から毎日あいつを見ているのだけど。
「そんなにいいかー?大串君って。」
後ろでテストの採点をしていた、この教室の管理者である坂田銀八が話し掛けてきた。
この質問何回目だろう、と思いながら「うん。」と言うと紙とペンの擦れる音が止まった。
あたしはあいつから目を離さずにじっとしている。
「じゃあ告れば?」
半笑いな声が耳に響く。
この答えも先生は知っているはずなのだが、今日も聞いてくる。
きっと先生は青春しているあたしが可愛くて仕方が無いのだろう。
「ここで見てるのが一番いいの。だから明日も鍵、開けておいてね。」
まだあいつから目を離さないでいる。
あとちょっと、と小さく呟く。
先生はふっと笑うとまた採点を始めた。
ふと、あいつがこちらを見る、3秒程のできごと。
あたしとあいつは目線を繋げた。
先生は、それを知らない。
2007.08.16