今日も雨。
ここ数日雨が降り続いている。
天気予報では1週間ほど雨が降り続くと言っていた。
こう雨が降り続いてもらうと、仕事の依頼に来る客も来ない。
それに仕事をしようという気にもならない。
そして湿っぽい空間で気分のいい目覚めができるはずもない。
寝ぼけた足取りで洗面台まで行くと、部屋から聞こえてくるテレビ音に気がついた。
起きんのはえーな、神楽だろうと思いコップに立ててある歯ブラシを手に取り、歯磨き粉をつけて口に放り込んだ。
現在コップに立っている歯ブラシは2本。
俺は歯を磨く手を止めない。
右上奥歯、左下奥歯、前歯、裏側、そして口を濯いだ。
歯ブラシを洗ってコップに立てる。
歯ブラシは3本。
顔も洗い、ようやく目が覚めかけた頃にリビングへ足を運ぶ。
テレビ音に近づいている最中、一つ大きな欠伸をした。
「銀ちゃんおはよう。」
「神楽ー。お前・・・って、か。おはよーさん。」
「朝ご飯作ってあるから食べてね。」
「おお。」
神楽がこんな朝早くに起きるわきゃねーか、そう思って頭を掻きながら冷蔵庫を開けるとサラダが2皿置いてあった。
リビングからは「小さい方は神楽ちゃんのだよー。」と言うの声が聞こえる。
俺の分のサラダと、苺みるくを取り出した。
苺みるくを一口飲んだ後、フォークで野菜を突き刺し口に放り込む。
酸っぱいトマトが完全に眠気を消した。
リビングに向かうとはテレビを見ながら笑っていた。
皿と苺みるくのパックを机に置き、椅子に座る。
が俺の方を見てニコリと笑った。
「銀ちゃん、おいしい?」
「ベリー美味い。」
あはは、とは笑いながらテレビに顔を向けた。
その仕草に一瞬惑い、息を吸って吐きながら言葉を出した。
「なあ、。」
なあーに?と首をかしげて言うに不気味さを感じつつ、聞かなければならない事を吐く。
「お前、なんでここにいんだ?」
の顔は変わらない。
ニコリと笑って、俺を見据える。
その黒い目が俺を吸い込む、そして俺は小さくなる、そんな感覚に酔いながらも俺は負けじとを睨みつける。
「そんなに見つめないでよ。穴が開いちゃう。」
あはは、またあの笑い方で笑う。
睨んでんだけど、と俺は言うと笑顔は崩れ、無表情になった。
「俺、お前と別れたつもりなんですけど、2週間くらい前に。」
無表情のまま、テレビに顔を向けた彼女はそっと溜息をついた。
そして何事も無かったかのように「今日の昼ご飯何がいいかな、何食べたい?」と聞いてくる。
俺は何も返さず食べかけのサラダを台所へ持っていき、処理を済ませた後、水で口を濯いだ。
テレビの音が消えたのを不思議に思い、リビングへ戻るとぼうっと立っている彼女がいた。
思えば昨日のこの時間帯にも、似た情景を見た覚えがある。
この後彼女は俺をじっと見てこう言う。
泣いている様子もない声で、むしろ怪しく笑って、呟くように言葉を出す。
「だって、好きなんだもん。」
(きっと明日どんな天気だろうと、お前はここに座っている)
2007.08.15